11月の誕生石:トパーズ

美しさと実りの象徴、トパーズ

秋が深まる11月。実り豊かなこの季節は、古代ローマの暦では収穫祭・カーニバルの季節とされ、人々は収穫を祝い、太陽や神様への感謝を捧げてきました。11月の誕生石であるトパーズも、ポケットに入れておくだけで太陽の恵みが得られるといわれ、実りの時期を象徴するような宝石です。

「誠実」「友情」「潔白」「希望」などの石言葉を持つトパーズですが、肌身離さず持つことで熟睡でき、「美と健康を促進する」ともいわれています。ペグマタイト(※)の花形として絶大な人気を誇るトパーズ。その特徴や、宝石にまつわるエピソードを見ていきましょう。


※火成岩の一種。大きな結晶の形で産出するのが特徴で、巨晶花崗岩(きょしょうかこうがん)とも呼ばれます。

黄色以外にもさまざまな色が楽しめる

日本では「黄玉」とも呼ばれ、かつては黄色い宝石はすべてトパーズと呼ばれていたほど、「トパーズ=黄色」というイメージがあります。しかし、トパーズには光や熱の影響で変化しやすいという他の宝石にはない特徴があり、現在ではさまざまな色の宝石が存在しています。

黄色以外に天然で産出されるものとしては、無色透明でダイヤモンドにも似ている「カラーレストパーズ」、薄茶色の「シャンパントパーズ」が多く、他にも稀少性が高いピンクや淡いオレンジ色、赤や紫に近い色なども産出されています。青く輝く「ブルートパーズ」や、さまざまな濃淡が楽しめる「ミスティックトパーズ」などは産出後に加工されている場合が多く、価格帯も比較的リーズナブル。手に入りやすいため、日常的に身に着けることができます。

天然のトパーズの中では、褐色みのない濃い目のピンク色のものほど価値が上がる傾向にあります。特に貴重なシェリーカラーのトパーズは「インペリアル・トパーズ」と呼ばれ、ブラジルのミナス・ジェライス州が主な産地となっています。その名の通り、シェリー酒を思わせるようなやや黄みがかった美しいピンク色で、女性らしい装いにぴったりの宝石です。ちなみにミナス・ジュライス州は世界最大のトパーズの産地として知られ、ときには200kgを超える大きな結晶も産出されることも。他にはロシアのウラル地方、パキスタンなどもトパーズの産地として有名です。

トパアズいろの香気が立つ――『智恵子抄』に登場

明治から昭和にかけて活躍した詩人・高村光太郎。彼が死の床に伏した妻にささげた詩集『智恵子抄』は日本文学史における傑作の一つとして知られ、後世に大きな影響を与えています。その悲しみと慈しみに包まれた詩の中に、トパーズが登場します。

トパーズが登場するのは「レモン哀歌」という詩。智恵子の命がまさに絶えようとしている瞬間を描いた、作品の中でも重要な一篇です。

そんなにもあなたはレモンを待つてゐた
かなしく白いあかるい死の床で
わたしの手からとつた一つのレモンを
あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ
トパアズいろの香気が立つ
・・・・・・

高村光太郎「智恵子抄」より

この頃はまさに「トパーズ=黄色」というイメージが定着していた時代。智恵子の最後の“生”を感じさせる「レモンを齧る」という行為、このとき光太郎の目にはたしかに「トパアズいろ」の輝きが見えたのでしょう。このすぐ後、智恵子はゆっくりと息を引き取ります。トパーズをモチーフにした儚くも美しい描写が、愛する妻を失う悲しみをより際立たせています。

繊細なトパーズは保管場所にご注意を

先述のとおり、トパーズは色が変化しやすい繊細な宝石。
美しさを保つためには日々のお手入れや保管場所にも気をつけることが大切です。

普段のお手入れ

柔らかい布で全体をやさしく拭きます。

特別なお手入れ

中性洗剤を溶かしたぬるま湯にトパーズを入れ、柔らかいブラシでやさしくこすって洗いましょう。終わったら真水でよくすすぎ、柔らかい布で水気を拭き取ります。

お手入れの注意点

・硬度の高いトパーズですが、へき開性(ある特定方向へ割れやすい性質)があるため、超音波洗浄機の使用は避けてください。
・光や熱の影響で宝石の色が変化することがあります。長時間日光や電灯が当たる場所を避けるなど、保管場所に気をつけましょう。

硬度が高く、小粒のものでも強く輝くトパーズ。その美しさを絶やさないために、丁寧なお手入れをしていただくことをおすすめします。


黄色だけでなく、さまざまな色で私たちの目を楽しませてくれるトパーズ。「大きな希望やチャンスを引き寄せる」とも言われている宝石です。トパーズのジュエリーを身に着けて、晩秋の散歩に出かければ、新たな出会いや発見があるかもしれません。

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